ワイナリー 2015.11.20

オコタ・バレル Ochota Barrels

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オコタ バレル Ochota Barrels
産地:オーストラリア アデレードヒルズ Adelaide Hills,Australia

Australia

タラス オコタはアデレード大学で醸造学を修めた後、数々の有名ワイナリーでワインメーカーを歴任してきた秀才でした。南オーストラリアではTwo HandsやMurray Street Vineyards、Nepenthe、更にイタリアのプーリアやシシリー、カリフォルニアではKunin、Bonnacorsi、Arcadian、Schrader、Out Post、Hitching Post’sといったワインをスターダムに伸し上げた先に選んだ道が現在のオコタ バレルです。それは妻アンバーと共に古びたワーゲンワゴンに乗りながらカリフォルニアからニューメキシコに掛けてサーフィン ツアーをしながら思いついたアイディアで、生まれ育った南オーストラリアでクラフトワインを作るプロジェクトでした。
アデレードヒルズの中でも最も涼しいレンズウッドに居を構え、オコタが始めたワイン作りは只管シンプル。野生酵母発酵で無清澄、無濾過。バスケットプレスで古めかしく作る昔ながらのスタイルです。醸造過程では一切のSO2を拒絶しています。
とはいえパンク ミュージックとサーフィンがライフスタイルの中心にあるタラスが作るワインですから当然作りはファンキー。特に南フランスで出会った沢山のワインメーカー達や同じ集落で暮らすルーシー マルゴーやヤウマ達から大きな影響を受けて、そのワインスタイルは毎年どんどん変貌を遂げています。

Weird Berries in the Woods
ウィアード ベリーズ ゲヴュルツトラミネール
ウィアード ベリーズの畑はアデレード ヒルズの中でも標高が高い600メートル付近にありますが、何よりも注目すべきはこの畑がビオディナミによって細心の注意を払いながらケアされていながら、付近に自生する森林に囲まれて直射日光が余り差し込まない点にあります。肥沃な土地では房が大きくなる傾向が強いこの品種は、タラスの畑ではただ小さな金塊の様に房を付けます。一種異様な様相を呈すフルーツに対してウィアード ベリー(奇妙な果実)と名付けたのは、そのフルーツの外見に由来しているのです。
500kgの果実を一晩の内に一気呵成に収穫します。
丁寧に除梗した後に最大5日間スキンマセラシオンを行い、バスケットプレスでプレスします。その後、5年落ちの使い込んだホグシェッド(250l入りの古いイギリスサイズ樽)で野生酵母発酵。発酵を終えてそのままの樽で12週間熟成に入ります。1週間に一度だけ中の様子を覗くそうですが、その際に自分の手を樽に突っ込んで底に溜まった澱をステアするそうです。
ボトリンスの際に30-40ppmのSO2を使用しますが、発酵及び熟成の期間は一切の添加物を加えません。グラビティシステムで瓶詰を終えた後に数週間だけセラーで寝かせ、出荷となるのですが生産量は僅か1918本。現地のバイヤーが競って購入するスターワインと1つです。

Slint Chardonnay
スリント シャルドネ
アデレード ヒルズは南オーストラリア州に於ける冷涼気候エリアの代表格ですが、スリント ヴィンヤードは標高550mにあるバスケット レンジの日当たりが優しい小さな畑です。隣り合う様にルーシー マルゴーがシャルドネを収穫する契約畑があり、一帯はオーガニック プラクティスを通して守られた自然と共に静謐な雰囲気に包まれています。
衛星地区レンズウッドにあるこの畑の周囲にはクォーツを多分に含んだ鉄石土壌が主体で、名門ヘンチキがその土地の殆どを保有する銘醸区です。
ディジョン クローンを主体としていますが、クローン セレクションを行っている訳ではなく、未だ樹齢は15年と比較的若い畑と言えるでしょう(因みに農薬や化学薬品が土壌を汚染していないオーストラリアは世界で最もブドウ樹が⻑生きする国です)。収穫は全て手作業で夜間に行われ、収穫を終えたフルーツは速やかにトロンセの古樽にバスケットプレスされます。マロラクティック発酵を好まないタラスはガレージの中で最深部でこれらの作業を独りで黙々とこなす訳です。
一見するとぐうたらなヒッピーを思わせるタラスオコタですが、ワインは相反して非常にソリッド。
グラニースミスの個性が非常に鮮烈。ヌガーの風味が奥に潜み、非常にクラシックでみずみずしいシャルドネです。

Surfer Rosa Grenache
サーファー ローザ

サーファー ローザはタラス オコタがグルナッシュベースのワインで(年によってはサンジョヴェーゼ等とブレンドします)フレッシュなヌーヴォースタイルを表現したいと考えて作り始めたピチピチ スタイルのワインです。
ルーシー マルゴーやヤウマ等と活動を共にしている彼にしては珍しく正式な認証を得たビオディナミのフルーツを使用していますが、認証等は正直どうでも良い話です。それよりも1940年代に植えられたこの畑は全てのブドウ樹が接ぎ木される事無く株のまま植えられており、非常にプリミティヴな雰囲気に守られています。
僅か3畝しかない貴重なグルナッシュを「昼飯を食う前に急いで収穫すんだ」(タラス談)。最大1日半スキンマセラシオンしたフルーツを一気に、しかしながら優しーくプレス。使い古したバリックに流し込みます。野生酵母発酵の後に6週間熟成を行います。但し今年は新しい樽を買ってしまい、その風味に負けない程狂った様にアロマティックに仕上げたくなり、毎日1回は腕をつっこんで澱をかき混ぜたそうです。
因みにサーファーローザとはアメリカのオルタナティブバンド、ピクシーズが初めて発売したデビュー アルバムの題名。同じくサーファーであるタラスが作ったロゼに名付けるにはうってつけの名前です。

The Green Room Grenache Syrah
グリーン ルーム グルナッシュ シラー
グリーン ルームはタラスとアンバー、オコタ夫妻が懇意にしている友人が経営するサーフショップ(サンゴ焦やビーチを守る活動をしているそうです)の名前から付けたオコタ バレルで最もフレッシュなスタイルを意識したキュヴェです。偶然にも日本で同じ名前のロックフェスティバルをインターネットで目にした時は嬉しくて堪らなかったとも言っています。
サーファーローザと同じ畑から収穫されるグルナッシュとシラーをブレンドしたこのワインはロゼ用のフルーツを収穫してから約10日後にピックされます。4日間のコールドソークを行い、ゆっくりと野生発酵に移っていくわけですが、年によっては短くて4週間。⻑い時には3ヶ月程スキンコンタクトを行います。勿論一切の添加物を拒絶し、プランジ(パンチダウンと同意ですがメタルの押込み棒等使わず全ては素手で行います)をしながら熟成期間を見定めていきます。常に味見を繰り返し、ここと決めた時にプレッシングし古い樽に移してから熟成に入ります。熟成期間は約2カ月のみ。フレッシュ感を只管に大切にしているからです。
時にピノ ノワールとも勘違いしてしまう程にジェントルで染み込むスタイルのグルナッシュ。今年は夏の熱い時期に雨が続いてくれたお陰で「去年よりもグッと来る味になんたんだよな。毎年こんな味になってくれたら死ぬ程ハッピーなんだけどもさ。分かってくれるよな?」とはタラスの弁です。

Fugazi Grenache
フガジ グルナッシュ
フガジ ヴィンヤードは南オーストラリア州マクラーレン ヴェールのサブリージョンであるブルーウィット スプリングスにある畑で、平均樹齢65年の古いグルナッシュが株で植わっています。
フガジは「F**ked Up, Got Ambushed, Zipped In」の略で、ベトナム戦争に参戦した兵士のスラングから生まれた言葉と言われています。要は「どうしようもなく滅茶苦茶で、待ち伏せされて、袋のネズミみたいに追い詰められた」という意味で、戦争における極限状態を意味しています。フランス語のFougasse(地雷)や英語のFugacious(はかない)ともライムしている現代単語です。
音楽ファンにとってはハードコア バンドの金字塔イアン マッケイ率いる「フガジ」の方がしっくり来るかも知れません。タラスとアンバーがマクラーレン ヴェールを行脚している時に偶然見つけたフガジ。この畑に名付けた人や時は明らかになっていませんが、車の中でフガジの音楽をかけながらドライブしていた2人にとって、これは運命の出会いだったと言います。
パンクな響きのくせに中身はいたってまともな作りです。手摘収穫した果実を7日間コールドソーク、全房発酵した後に80日以上スキンコンタクトをしています。グルメトラヴェラーのマイク ビニー曰く「美味過ぎるグルナッシュの代表格」だそうです。

A Forest Pinot Noir
フォレスト ピノ ノワール
フォレスト ピノ ノワールは単一畑によるテロワールの表現を常に目指そうとするタラス オコタにとって些か珍しくも2カ所の畑から収穫されたフルーツをブレンドしたリージョナルワインです。
名前は音楽フリークのタラスが名付ける他キュヴェの例に漏れず1960年代に活躍したサイケデリック&アシッドフォークのバンド名から付けられています。
メインとなっている畑はルーシー マルゴーがブドウを収穫する事でもよく知られるモノミース ヴィンヤードの直ぐお隣。標高600mに広がるアシュトン地区に植えられたロマネ コンティ クローン777がその根幹となっています。もう一方はMV6クローン。1831年にクロ ド ヴージョから持ち込まれた、この野性味溢れる個性的なクローンは標高700mにあるキャレイ ガリー地区から収穫されます。777は100%全房発酵。MV6は25%を全房発酵。別々に発酵を行った後に25%の新樽で12ヶ月の熟成を行っています。
年によってMV6やデジョン クローン114/115を使い分けるタラスですが、このワインの基礎を成すのはやはりアシュトン地域の777です。同じ区画でも114/115をメインとして使うルーシー マルゴーとの飲み比べも彼らのパーソナリティを較べている様で興味深く面白いものになるかも知れません。

I am the Owl Syrah
アイ アム ザ オウル シラー
アイ アム ザ オウルのブドウは冷涼なアデレードヒルズの衛星地区であるマウント バーカーで収穫したブドウのみを使用しています。マウント バーカー(同名生産地が⻄オーストラリアにもありますので混乱しがちですが)はピンク色の岩塩で有名なマレー河からほど近いエリアで、特に激しい寒暖差が顕著です。過酷とも言える環境はタフな植物を求める上で最適な条件を整えており、乾燥した表土はフィロキセラの到来も拒絶します。ところが第二層にロームがあり、水分が留まる為に灌漑も必要としておらず、オーガニック アプローチでハーブやスパイス、フルーツを育てる農家が多く集中する興味深い地区でもあるのです。因みに有機植物だけで作られるコスメティックとして世界有数の人気を誇るブランド、ジュリークの本拠地はこちらにあります。
アイ アム ザ オウルのインスピレーションはデッド ケネディズの同名曲から得たそうです。実は山火事が発生する危険が高まったある日、タラスはガレージの外で発酵を終えたばかりのシラーの樽を急いでガレージ内に運び入れました。フォークリフトが故障して使えなかった為に、樽を転がして何とか運んだそうなのですが...結果味見をしたワインが非常に複雑。云わばローターファーメントを樽の中で自力で行った状態になった訳です。デッド ケネディズの曲の中で繰り返し歌われる”Spinning”という言葉がここで意味を持つ事になるのですね。

A Sense of Compression
センス オブ コンプレッション
タラス オコタはお気に入りのロック バンドにちなんだキュヴェを作る男ですが、このワインだけは存在そのものがロックです。現在世界で最も影響力のあるプログレッシヴ バンド、トゥールのメイナード キーナンとの共作ワインであるこのキュヴェは文字通り2人の共同作業から生まれた特別なボトルです。
メイナード キーナンはよく知られた大のワインマニア。アリゾナでカドゥケウスというワイナリーを実際に所有してワイン作りにも精を出していますが、元々彼は北イタリアで⻑らくワイン作りに携わる一族出身でした。タラスとはアメリカで知り合ったのですがすっかり意気投合。
2人でナチュラルワイン作りをするプロジェクトをスタートしました。
2人の性格を考えれば綿密に打ち合わせした上でワイン作りをする...はずもなく、全ては気の向くまま。グルナッシュに2%ほどのゲヴュルツトラミナーを混醸して生まれたのが、このセンス オブ コンプレッションです。2014年はその第2作にあたります。「第1楽章が好評だったから作ってみたんだけどこのワインが繋ぎになってミック ジャガー達がウチに遊びに来てくれたんだからね。バンドと同じでいつ終焉を迎えるか分からないけど、メイナードと俺の体力が続く限りは楽しみにして欲しいもんだね」と言っていますので、来年にも期待してみましょう。

グリーン・ルーム・グルナッシュ・シラー2014

(オコタ・バレル)

Green_Room
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テイスター: 田中克幸

さらーっと流れる、少々薄めの、あまり力のない、ゆえにスタティックなワインだが、スパイシーさとリッチさが適度にバランスする味のきれいさが好ましく、余韻に至るヌケのよさもいい。2015/10/8

評価:★★★

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