bed。一風変わったネーミングだが、二つある扉をくぐり抜けて店内に入るとカウンターのみのレストラン&ワイン・バー。表の渋谷の喧噪がウソのような落ち着いた空間。大人の隠れ家という使い古された言葉で表現してしまいそうだが、控えておこう。
テーマはお客様とのコミュニケーション
メニューは用意してあるが、当日の食材でお客様の要望を伺いながらアレンジをきかせる。
シェフいわくコース仕立てのなかで、一皿でもお客様のイメージを超えられる事が1日、1日のテーマとのこと。
本来我々も、何が食べたいかをわかってレストランに行っているのだろうか?
そういった漠然としたイメージを具現化するのが料理人の仕事の真骨頂と彼は言う。
グラスワインも豊富、常時10種以上は用意しており、多くのお客様は料理に合わせてソムリエのすすめのもとワインを楽しむ。「おまかせ」というオーダーが最も多いとは信頼の証ではないか。
スペシャリテは尾崎牛の低温ロースト
宮崎県、尾崎宗春氏の育てる尾崎牛の話をここ最近良く耳にする。
こちらの店では常時尾崎牛を提供。
いわゆるさしが入った和牛ではなく、赤身にうっすらと美しく脂がちりばめられた尾崎牛に最も適した調理法はゆっくりと火入れに時間をかけたローストではないかとはシェフの弁。
確かに奇麗なロゼ色ながら火は中心まで入っている。柔らかに繊維の活きたまま、肉本来の味わいが噛めば噛むほどに長く楽しめる。
聞けばポーションも好みに応じて切り分けてくれるとの事。過去に1キロ食べたいという強者のオーダーに応えた事もあるそうだ。そして1キロは完食。それは大変なことだが、このもたれない肉質なら理解はできる。自分なら500グラムが限界だろうか。。
名物のトリュフバター
8年前の開店から長く愛されている名物はトリュフバター。もともとは料理のあいまにお客様を待たせない事を考えて提供をはじめたらしいが、ワインとの相性は抜群。2軒目以降の来店でもワインとパンとトリュフバターで過ごすお客様も少なくない。
季節の食材
この店のもうひとつの特徴は1週間ごとに旬の食材をテーマにメニューを入れ替える事だろうか。
季節感。料理屋で提供できる事を考えたあげく、週代わりで向き合う食材を選ぶことにしたという。
最後に何故、bedという店名にしたのかたずねたところ、シンプルなネーミングにしたかったとはソムリエの宮地氏。フレンチでもイタリアンという枠組みではなく自由なレストラン、ワインバーでありたいと訊いてなんとなくひとつひとつの話がつながったような気がした。
渋谷らしくないではなく、bedらしいがこの店の表現にはピッタリくる。
シェフ紹介
宮田 浩明
みやた ひろあき
【プロフィール】
調理科高等学校を卒業し料理の世界へ。
銀座三笠会館で10年間の料理人経験。イタリアンレストランAGITOではスー・シェフを努める。
2013年1月より同点のシェフに就任。