Column 2017.03.15

フーデックスでのジョージア・ブース

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フーデックスでのジョージア・ブース (2)

フーデックスではそれほど多くのワインブースはありません。チリもアメリカもオーストラリアも昔は大々的に展示していたと思いますが、、、。マイナーな国のワインをテイスティングするよい機会だったのに、、、。今ではワイン&グルメやヴィネクスポもありますし、わざわざ先方から来ていただかなくても日本から皆出かけていくからかも知れません。
 その中で多くのワインが出展されていた国は、オーストリアやドイツであり、特に目立ったのはジョージアです。ジョージアは輸出ワインの50%が五大ワイナリーによって生産されます。上位20社で90%です。そもそも登録された生産者は驚くほど少なく、170軒程度。というわけで世界じゅうの展示会で見る顔ぶれは皆同じという印象です。
 数年前は皆あか抜けない味のワインだった記憶がありますが、今回は再びジョージアワインの進歩を目の当たりにすることができました。香りがすっきりと伸びて、余韻に至るまでの直線的な流れに淀みがなくなり、形状も凹凸がなく、酸もきれいになりました。そうなってくると、「さすがワインの...元祖」と言うしかない圧倒的な存在感、安心感が前面に出てきます。フーデックス会場で他国のワインをあれこれ飲んだ後にジョージアワインを飲むと、「まいりました」という感じです。世界江戸前寿司コンテストがあったとして、あちこちの国の創作寿司を食べたあとに日本ブースで食べたら、きっと「さすが」、「まいりました」と言いたくなるはず。江戸前寿司における日本はワインにおけるジョージアでしょう。
 大手ワイナリーでもクヴェヴリ発酵のワインが増えたこともよい知らせです。2013年に世界遺産になったジョージアの伝統的ワイン製法の圧倒的な宣伝力を使わない手はありません。そしてそれが多くの人に望まれていることでもあります。大手の造るクヴェヴリ発酵ワインは概してさらっとしてあまりクヴェヴリ臭くなく、ジョージアワインマニアではない一般の人にも普通に受容されるでしょう。

こうした展示会には、必ず極上のグラン・クリュが並んでいます。つまり、ツィナンダリ、ツヴィシ、フヴァンチカラ、キンズマラウリ等です。大半の安価な品種名ジョージアワインは平地の沖積土壌の畑で造られます。対してそれらは傾斜地ないし丘陵の麓です。前三者は石灰岩土壌、後一者は頁岩土壌です。ミネラル感、抜け感、華やかさ、酸の質が普通のワインとは違います。ジョージアワインについて正しい認識を持つためには、これらを飲むべきです。とはいえ後三者は残糖があるので、あえて一本食中酒としての基本を選ぶならツィナンダリでしょうか。だいたいルカツィテリ8にムツヴァネ2程度のブレンドですから、単一品種ワインより多面的な味がしていろいろな状況で使いやすいと思います。
 いつも不思議に思うのは、「ジョージアワインが好き!」と言う人は多いのですが、「なにが好き?」と聞くと、全員が、よくメディアに登場する日本で有名ないくつかの小規模ワイナリーの名前を挙げることです。「フランスワインが好き!」、「なにが好き?」、「コント・ラフォン」というのか、「ブルゴーニュ」ないし「シャルドネ」というのか。生産者名の答えばかりというのはさすがに情報が偏っていると思います。ヴァジスバニやナパレウリといったPDOがどんな個性なのかを伝えていく努力は必要ですし、それこそジョージアワインアソシエーション等の団体が率先してやっていただきたいことです。

写真は、Dugladze社のブースで撮りました。私が手にしているのは、大好きなツヴィシPDOのワイン(ツヴィシにまずいものなし!)と、ジョージアのワインカップ、ピアラです。ジョージアワインを飲むにはピアラは不可欠です。ピアラを持っていない人を真のジョージアワインファンと呼ぶのは、日本の箸を持っておらずフォークとナイフで食べる人を真の刺身ファンと呼ぶのと同じぐらい難しいことだと、個人的には感じてしまいます。しかし各ブースでピアラで飲んでいると、一部の若いジョージアの方は「ピアラで飲んでは味が分からない、グラスで飲むべきだ」と。これは困った傾向です。食品と食器は不可分な対になっているものです。まずはそれを理解した上でアレンジするのは普通ですが、手で寿司を食べたことがないまま、そしてその伝統を知らないまま、突然ナイフで切ってフォークで食べたらおかしいですね。ジョージアワインの輸入元さんは是非ピアラも輸入していただいて、セットで売ってほしい。ピアラはとても安いものですから。ただ、手入れは大変です。。。

コチラの記事は日本橋浜町ワインサロンFacebookページより転載しています。

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