Column 2016.08.24

日本への輸入が待ち遠しいチリのテロワール カサ・シルヴァ

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 1892年創業以来家族経営の大規模ワイナリー。世界主要各国に輸出されているが、日本には輸出しておらず、私は今回初めて飲んだ。地元での評価は高いようで、ホームページを見ると、ワイン・オブ・チリによる2013年年間最優秀ワイナリー賞、ヴィティス誌による21世紀最多受賞数ワイナリー、といった記載がある。

日本が輸入しないのも分かるような気がする。これは“テクニカリー・パーフェクト・ニュー・ワールド・ヴァラエタル・ワイン”な味ではなく、チリの地酒の味。肩の力が抜けたくつろぎ感に包まれ、ゆっくりとした時間が流れるスペイン・コロニアル・スタイルの併設ホテルに宿泊したあとにテイスティングすると、ワインにも同じような古典的な穏やかさが感じられ、ますます好きになる。
※醸造所にはゆったりとしたスペースがあり、オーナーの趣味である古い車がたくさん並べられている。こういう心地よいユルさが家族経営の老舗らしくていい。車はどれも見事なコンディションだ。しかしアルファP2やブガッティT35といった超ブランド・クラシック・カーではなく、70年代のプジョー404といった趣味よく渋い乗用車が主体。オーナーはプジョーが好きらしい。このことからも、カサ・シルヴァがどんなノリのワインかが想像できるだろう。
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いくつものブランドを抱える複雑な商品構成の中で注目したいのは、まずはコルチャグア・アンデスにあるロス・リングエス畑の最上の区画のみから造られる、マイクロ・テロワール・カルメネールだ。コルチャグアではカベルネ・ソーヴィニヨンがいまひとつなのはカサ・シルヴァにおいても例外ではなく、カルメネールがいいのだが、このワインは中でも特別。「成熟の遅いカルメネールは収穫前に熱風が吹くと完熟する。ロス・リングエス畑はまさに熱風が吹くのがいい」。砂利と粘土の土壌だというが、ポムロール的なとろりとした質感があり、タンニンが熟し、いやなピーマン臭さなどなく、むしろフローラルで、アンデスならではの酸の伸びがある。
※コルチャグアの東端、ロス・リングエス畑で造られる、マイクロテロワール・カルメネール。生産本数は18000本。カサ・シルヴァはサステナブル農業の認証を取得しており、畑では殺虫剤は少し使うそうだが、除草剤は不使用。
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もうひとつの注目作は、サンチャゴから南に904キロ下がった、パタゴニア(アペラシオンはアウストラル)のフトロノで造られる、ラゴ・ランコ・ソーヴィニヨン・ブラン。1月から5月の平均最高気温が18・5度にしかならない冷涼産地であり、年間降水量は日本より多いぐらいの1800ミリ。ランコ湖を前にした畑は火山性土壌で、火山灰を含む。この条件から想像する通りの、キリッと冷たく、酸が大変に強く、みずみずしく、しっとりとして、華やかな香りのワインだ。チリでは冷涼産地のワインが最近のトレンドであり、チリ全土の冷涼産地が発見、開発されている。カサ・シルヴァはこの地に2006年にブドウを植えたパイオニアであり、その先見の明はこの強烈なまでに冷涼な味の素晴らしさを経験すれば明らかだ。

これらふたつの代表的ワインを見ても分かる通り、チリでは優れたテロワールの個性を表現することに主眼を置いたプレミアムワインが次々に登場している。それは以前のような、重たくて強くて樽の効いたワイン=高級ワインといった考え方からの大いなる飛躍であり、現在のチリワインがおもしろい最大の理由なのである。
※コルチャグアのアンゴストゥラ畑の隣にはオーナーの趣味であるポロの競技場があり、カサ・シルヴァ・ポロ・ロデオ・乗馬クラブハウスが建っている。その中にレストランがあり、ワインツーリズムにとって魅力的なスポットとなっている。
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