コラム 2017.03.06

ヴァンサン・レシュノー

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レシュノー (2)

八田の試飲会に行ったら、ドメーヌ・レシュノーの当主、ヴァンサン・レシュノーさんがいました。
 生真面目な性格の、緻密で直線的な味のブルゴーニュワインを造ります。ニュイ・サン・ジョルジュのドメーヌですから、それが土地のキャラクターと合っています。レ・ダモードとレ・プリュリエのふたつの一級を飲みましたが、「レ・ダモードは標高が高く、表土は20センチしかなく、母岩の石灰岩はもろい。レ・プリュリエは標高が低く、表土が1メートルあり、しかし母岩の石灰岩は固い」。まさにそういう感じの味の違いです。レ・ダモードは重心上で、外はタイト、中はしなやか。レ・プリュリエは重心中央で、外がソフト、中がタイト。ブルゴーニュはおもしろいですね。

しかしそういう様々な個性の一級がニュイ・サン・ジョルジュに41あっても大変です。隣にブルゴーニュの第一人者として知られる超有名シェフがいたので、「誰かNSG一級を使いこなせる人がいるのか」と言うと、「いるわけないじゃないですか」。彼が使いこなせないなら、まあ常識的にはいないということでしょう。だからこ...そ探求のしがいがあるのがNSG。レシュノーさんは「NSGの人たちの多くはグラン・クリュを欲している」と言っていましたが、確かにそれでNSG全体の格というか評価も上がるのでしょうけれど、それが全面的にいいことなのかどうか。グラン・クリュが出来てしまうと、そればかりをありがたがる人が買いますし、つまらない一元的な評価軸でのみワインを見るようになるし、今のNSGの水平的な多様性の広がりというおもしろさがなくなってしまいます。現状ではNSGについて何か語ろうとするならそれなりに勉強しなければ無理です。ちょこっとグラン・クリュを飲んで分かった気になることはできません。それが通な感じでいいのです。
 「それにしても、ニュイ・サン・ジョルジュの中でもプレモー・プレセー村のワインは違いすぎ。あれもNSGというからNSGとは何かが分かりにくくなる」と私が言うと、「あそこは粘土が多いから。特に南端ふたつのクリマは、NSGの中でも継子だ」。なかなか素直な意見ですね。初心者向けに言うなら、ようするにNSGを構成する三つのエリアは、ヴォーヌ側はチキン胸肉ソテー的、中央部は鴨グリル的、プレモー・プレセーは牛肉シチュー的です。

 NSGは白もありますが、レシュノーさんは「NSGは赤の産地。自分は絶対に白は造らない。自分の白の畑はモレ・サン・ドニの斜面最上部にある。白にはマルヌが必要だ。コルトン・シャルルマーニュもムルソーもそうだ。クロ・ド・ラ・マレシャルには白もあるが、それは昔植わっていたからという歴史的な理由だけだ」。NSGの中でマルヌ土壌の一級クリマとしては有名なクロ・アルロがありますが、ご存知のとおり、このクリマは最下部マルヌの場所にはピノ・ノワールが植わっていてシャルドネは上部です。
 レシュノーのワインは、クセがなくピュアで、ブルゴーニュを理解するための分かりやすい教科書としてもいいと思います。久しぶりになかなか楽しいブルゴーニュ談義をすることができました。

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