コラム 2016.02.08

インポーター紹介 トラキア・トレーディング

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
mezzek

ブルガリアのワイン。ブルガリアでもワインを造っているの?という声も聞こえてきそうですが、東ヨーロッパのワイン産地でまずおさえておきたいのはその長く古い歴史です。

アジアとヨーロッパとの文化の境界線が、そもそものワイン発祥の地といわれており、紀元前4~5千年前頃のブルガリアでは古代トラキア人による葡萄との共存が資料によって確認されています。紀元前8世紀に書かれた「オデュッセイア」物語に登場するトラキアワインはギリシャ、トルコ両陣営に輸出され「その色は黒く、蜂蜜のように甘くおいしい」と記述されています。

mezzek2

現在でいうところのパッシート、藁の上で陰干しし糖度を上げた葡萄からワインを造っていたのではないかと想像されています。これはフランスやイタリアとは違った伝統的なワイン造りがブルガリアでも行われていたことの証明です。

またギリシャ神話のワインの神デュオニソス(バッカス)の神殿が21世紀になってからの調査でブルガリア東南部ペルペリコン遺跡から発掘。ギリシャ神話の神も古代トラキアの神の派生という説が唱えられています。

世界最古のワイン文化を持つブルガリアも14世紀からの500年間のオスマントルコ支配下のなかでワイン産業は廃れ、1900年代にトルコからの独立でふたたび息を吹き返しますが、大戦後の1950年代には国営化、旧ソ連圏への大量生産、工業生産としてのワイン造りを志向していきます。

20世紀後半こうして多くの国や地域で価値観の大きな変化から文化が失われたことが考えられますが、ブルガリアのワインも同様で古い歴史と伝統といったアイデンティティを失ってしまいます。

※オーナーのトリリンスキー氏

mezzek3

1991年にふたたび民営化されたブルガリアワイン産業のなかで、ポーランド人オーナーのトリリンスキー氏によってカタルジーナ・エステイトは2004年にギリシャ、トルコ国境付近トラキアヴァレーに設立されました。トラキアヴァレーは冷戦終了後、ブルガリアがヨーロッパの一員になるまでの間、国境線付近立ち入り禁止区域に定められ、長年人が立ち入ることができず「ノーマンズランド」という別名もあった地域です。

トリリンスキー氏は地中海の影響を受ける大陸性気候の丘陵という特異なテロワールに以前から惹かれていたことがワイナリー設立の経緯となったということです。

カタルジーナ・エステイトの魅力をひとことで伝えるならば、古い歴史を背景に現代的なアプローチでブルガリアワインの復権を図っていることにあります。マヴルッドという古代品種を主軸にカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネをかつての銘醸地に植え、長く失われてきたテロワールの再表現を試みています。

※トラキア・トレーディング代表岡崎岳史氏

トラキアトレーディング岡崎岳志

 

2015年にはブルガリア・ベストワイナリーにも選ばれ、世界的なコンペティションでも数々の賞を受賞。徐々に成功を収めつつあります。岡崎岳史氏のトラキアトレーディングは2011年設立。カタルジーナ・エステイトの魅力を日本市場に広めるべく日々奮闘しています。

ブルガリアというと、ヨーグルトとダマクスローズが有名ですが、これからはワインも忘れてはいけません。世界中で高品質なワイン生産が行われていることに気付くのは未来の豊かな多様性に目を向けることでもあります。様々な価値観、文化があらためて生まれ変わろうとしているのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加