コラム 2016.01.04

【ドイツ/ザクセンのワイナリー】世界最高峰のヴァイスブルグンダー「クラウス・ツィマリンク」

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クラウス・ツィマリンク

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※見るからに整ったきれいな形をした畑、名高いグロース・ラーゲ、ケーニッヒリッヒャー・ワインベルク。土壌は花崗岩と片麻岩。

 ザクセンのワインとしてはたぶん最も高い値段。VDPメンバー。他のワイナリーの人も「あそこは高い。でもよく売れているんだよね」と。もちろんそれだけの内容でなければ無理な話だ。味わいの複雑性やスケール感といった点で確かにクラウス・ツィマリンクは別格的な存在であり、オーガニックというのも重要なポイントだ。

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 典型的とは言えないかも知れない。ドイツでは一般的な空気圧プレス機ではなく、クラウスさんの後ろに写っている小さな500キロ容量のバスケットプレスを使う意味を尋ねると、「他のワイナリーはどこも酸素を遮断した醸造を行うけど、うちはマストの適度な酸化が大事だと考えている」。アルザスの多くのビオディナミの生産者と同じ考え。だからこちらのワインも、ドイツ的というよりアルザス的なところがある。

 プレス二回分のマストは700リットルのステンレスの桶に入れられスキンコンタクトされる。これにより複雑さ(苦味も含めて)が生まれるだけではなく、酸が低くなる。温暖な産地ではスキンコンタクトは両刃の剣だが、「最北の産地ザクセンはもともと酸が高くなるから問題ない」。ザクセン=きりきりとした酸の冷たい味だと思ってここのワインを飲むと、驚くことになる。酸のまろやかさの理由のひとつとして遅い収穫も挙げられる。「去年は他のワイナリーの収穫が終わってから、つまり雨のあとに始めた」。夏から秋の長雨にパニックになった生産者ばかりの中で、クラウスさんは「必ず晴れる」と確信していたという。2013年や2014年でさえ、酸が突出している印象はない。

 年間降水量は600ミリ。きれいな形をした南向きの丘(エルベ川がすぐ近くに見える)、VDPグロース・ラーゲであるワインベルクの土壌は花崗岩と片麻岩。リースリング“A”2011年はアルザスのシュロスベルグとヴァッハウを混ぜて涼しくしたような味と譬えたら乱暴すぎるか。花崗岩の開放的なトロピカル風味と片麻岩の内向的な粒々ミネラルの不思議な調和がおもしろい。北の産地ゆえに夏の日照時間が極めて長く、ブドウはよく熟している。リースリングが決してメジャーとはいえないザクセンだが、このワイナリーはリースリングが成功している。

 ゲヴルツトラミナーは明らかに砂質土壌の味で、アルコールが高すぎて表面的な品種の個性に支配されていると思うが、ヴァイスブルグンダーのワインベルク2013年は見事。ザクセン最高の、いや世界屈指のヴァイスブルグンダーだろう。しかしもう売り切れ。1000本しか生産されなかったのでしかたない。2014年は出来がよくないヴィンテージなので格下げして発売することもあり、「2013年は相当量自分で飲むためにキープしてある」。そうしたくなるのも分かるが。。。。おもしろいのはグラウブルグンダーでも重心が高いこと。ザクセンは基本的に重心が高い。どんなに熟していても、だ。土が軽いということか。

 シュペートブルグンダーのゼクトも傑作だ。ふわっとしてとろみがあり、熟していてもクリアーで重苦しくなく、甘く感じてもドザージュはエキストラ・ブリュットで甘ったるくはない。余韻はさすがにシュペートブルグンダーで、非常に長い。ドイツのゼクトはおしなべて高品質だと思うが、酸の高いザクセンはゼクト最上の産地のひとつとなりえるだろう。しかし石灰質土壌ではないので、酸の性格がやさしいというのもいい。

 基本の瓶サイズは500ミリだ。92年の創業時の小さな畑(たった600平方メートル)に合わせたサイズだというが、現在では「他者との差別化になっているし、レストランでふたりで飲むのにちょうどいいと人気だ」。

 East Germany 013-minラベルの絵柄は奥さんのマルゴルザタ・ホダーコウスカさんの彫刻をモチーフにしている。ワイナリーの中にも彼女の作品が多数展示されており、敷地内の別棟にはアトリエ兼展示室がある。一度見たら忘れられない魂のこもった彫刻だ。「うちの奥さんは有名で作品が高く売れるから、経済的にはありがたい。特に2013年みたいに生産量が少ない年には」。ワインは無論、彫刻作品鑑賞という点でも、ザクセンで必見のワイナリーだ。

【ドイツ/ザクセンのワイナリー】歴史ある文化の結晶「シュロス・ヴァッカーバルト」に続く

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