コラム 2016.01.04

【ドイツ/ザーレ・ウンストルートのワイナリー】ドイツ最大のスパークリングワイン生産者「ロートケプヒェン・ゼクトケラーライ」

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ロートケプヒェン・ゼクトケラーライ

 

自社畑のブドウを自分で栽培して自分で醸造するレコルタン・マニュピュラン的ワインが人気だが、ロートケプヒェンはその正反対。1856年創業のドイツ最大のスパークリングワイン生産者なのに、自社畑は皆無。シャンパーニュのメゾンが機会あれば自社畑を増やそうと考えているのとは逆に、「うちはスティルワインをスパークリングにする業者」と割りきっている。

 フライブルクの街中に巨大な社屋を構え、そもそも住所がゼクトケラーライ・ストラッセ。とはいえザーレ・ウンストルート産ブドウの使用はわずかで、動瓶を手で行うシャンパーニュ法によるヴァイスブルグンダーのプレミアム・ゼクト5万本のみ。ドイツ産のシュペートブルグンダーとリースリングは瓶内二次発酵(デゴルジュマンのあとフィルターをかけてタンクに集められ、そこから瓶詰めされるので、シャンパーニュとは異なる)ゼクト250万本になる。1億6千万本も作られる主力商品はシャルマ法による6か月タンク熟成のスパークリング。ワイン(ブドウではない)はヨーロッパ各地から集められてくる。

※1950年代まで使われていた容量16万本分という巨大なブレンド用の樽。右上の人物と大きさを比較してみて欲しい。青色光でライトアップされているから不思議な雰囲気だ。
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創業者はシャンパーニュのマムと同じ一族。最初はモノポリーという名前だったが、シャンパーニュのエドシック・モノポールに商標侵害で訴えられ、1894年に今の名前になった。ちなみに「赤ずきん」とはいえグリム童話とは無関係だ。GDR時代には公営醸造所となり、ドイツ統一後1993年にはGDR時代にマネージャーだった人やアルコール飲料製造会社のオーナー計5人が購入。現在のオーナーは4人だ。

創業当時の醸造所は、現在では観光地コースになっており、観光客で賑わう。駐車場には観光バスがとまり、多くの人が見学に訪れる。そして地元にとっては社交場やパーティ会場。学校の卒業パーティや結婚披露宴に使われるそうで、私が訪問した時もライブバンドが入るパーティの準備をしていた。観光コースは19世紀に建てられた部分。中には16万本ぶんのワインが入るブレンド用の巨大な樽(1950年代まで使用されていた)が残されている。
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 スパークリングワインはエキストラ・ドライが主体、ドザージュは15,6グラムとのこと。個人的には甘すぎるが、「ドイツの消費者は辛口が好きと口では言うけれど買うのは中辛口。ブリュットも2013年までは作られていたのですが、まったく売れませんでした」。それはおもしろい話だ。日本人の多くも実はそうなのかも知れない。

昔の醸造所=観光コースを離れ、背後の丘を登ると現在稼働している醸造所がある。横にはイタリアナンバーのワイン運送タンクローリーが二台停まっていた。停車中はエンジンを止めろ、とのサインが、ドイツ語、英語、フランス語、スペイン語、イタリア語で書いてある。あちこちの国からワインが運ばれてくるから、どの国の運転手にも理解できるように、だ。

 

※中はひたすらタンク、タンク、タンク。16万リットル容量、高さ12メートルなどという巨大なタンクも288基。「1億5千万リットルのワインに44万リットルのリキュールと2万キロの酵母を入れて二次発酵」との説明を受けたが、数字の桁が尋常ではない。

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このワイナリーでおすすめは、フルーツ果汁入りスパークリングワインだ。いちご味、ざくろ味、マンゴ味、そしてエルダーフラワー味があり、人工香料等は使用せず、自然素材だけで造られる。去年4月に発売を開始し、昨年末までに1千万本を売り上げた大ヒット商品。テレビや雑誌で広告をうち、スーパーで大きなのぼりを立てたり、試飲販売をしたそうだ。「いままであまりワインを飲まなかった層に支持されており、意外かも知れないが男性客も多い」。

「いちご味とマンゴ味はとても甘いからあなたにはざくろ味がいい」と言われて飲んでみたが、想像をはるかに超えるおいしさ。ざくろ独特の渋みが甘さとバランスし、そしてこれが意外なのだが、余韻が大変に長い。もしかしたらざくろの余韻はブドウより長いのかと思う。これで550円程度ならヒットして当然だ。ワインの入口を広げるにはこういう商品も必要だ。

※直販所の様子。手軽な価格の商品ばかりだ。ザクロジュース入りフルーツセッコは本当にオススメ。

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それにしてもどうしてスパークリングがそんなに売れるのかと聞くと、「ドイツではスパークリングワインは社交のための必需品とみなされており、朝や昼のビジネスの席でもスパークリングならアルコール飲料でも許される。ゆえに飲む頻度が多い」とのこと。スパークリングワインはワインのひとつのタイプというより、単独のカテゴリーなのだ。

 

ワイン原産地は問わずに安定した品質の大衆向け商品を大量に生産するこの会社は、ワイン愛好家からすれば無関係なのかもしれない。しかし彼らが造るような商品がより多くの人を素晴らしいワインの世界に招き入れてくれる。それこそが社の使命と思って余計な趣味的商品を造らずに大衆路線をまい進するロートケプヒェンの潔い姿勢は大いに評価したい。

※社員食堂で従業員の方々に交じって昼食をとったが、ヘルシーかつ大変に美味。
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【ドイツ/ザーレ・ウンストルートのワイナリー】まだ若き小規模生産者「ヘイ」に続く

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