コラム 2016.01.04

【ドイツ/ザーレ・ウンストルートのワイナリー】旧東ドイツで再考すべき現代的アプローチ「フライブルク=ウンストルート協同組合」

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フライブルク=ウンストルート協同組合

 

 協同組合はマーケットを客観的に見るためにはとても大事な存在だ。ワインの味が個人の趣味性・嗜好性で決まることなく、輸出市場におもねることもなく、基本的に地元の人がいいと思う味、売れる味になっているからだ。81年の歴史と成員数450人、栽培面積350ヘクタールを擁するこのフライブルク=ウンストルート協同組合のワインも、見事なまでに地元な味がする。輸出担当マネージャーのサンドロ・スペルクさんによれば、彼が一年前に現職に就任する以前は、ワインはいっさい輸出されていなかったというから驚きだ。販売先はスーパーマーケットが圧倒的で65%、輸出は1%以下、残りはレストランと直販。90%が辛口か中辛口のスティルで、ヴァイスブルグンダーがメイン(市販価格はだいたい4・3ユーロぐらい)で、ケルナー、バフースが続き、ドルンフェルダーとポルトギーザーの赤も人気だという。

 ヴァイスブルグンダーのゼクトは予想どおりにおいしい。石灰岩土壌ならではのくっきりとした酸。冷涼感がありつつ、陰気な方向にならず、味わいには心地よい明るさと凝縮感が備わっている。「年間降水量500ミリ、日照時間は最大で1600時間。ザーレ・ウンストルートは北国のトスカーナと呼ばれている」というのが分かる味だ。

 ヴァイスブルグンダーつまりピノ・ブランは国際品種として有名だが、そのわりに「ここが代表的生産地だ!」というところがない。原産地ブルゴーニュではほぼ絶滅だし、フリウリやアルト・アディジェにもあるとはいえマイナーな地位。フリウリの白ならもちろんフリウラーノとリボッラ・ジャッラが優先されるし、アルト・アディジェの白ならトラミナーとソーヴィニヨンだろう。伝統的に栽培面積が広いアルザスでもピノ・ブランは高貴品種の仲間に入っていないし、ピノ・ブランのグラン・クリュ申請などという話もない。

※フライブルクの街中にある、素晴らしいヴァイスブルグンダーの畑、シュリフターベルク。

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 軽快な明るさ、さっぱり感、酸といったすべての要素を考えて、ザーレ・ウンストルートがこの品種の代表的産地として世界に認知されるに値するポテンシャルがあると思う。そのためにはたとえば南チロルのケラーライ・ザンクト・ミヒャエル・エッパンが、ソーヴィニヨンを未来を見据えた戦略的商品として資源を集中投下した例を参考にして欲しいと思う。いろいろな品種を漫然と造るのではなく、この協同組合がこれからどういう方向に行くべきなのかをしっかり議論し、「ヴァイスブルグンダーの世界一の生産者になるんだ!」という方針を決め、そのためのステップを着実にのぼっていって欲しいと思う。ザーレ・ウンストルートが世界のワイン消費者のあいだで正当なポジションを確立するためにはそれしかないと思うし、ここにはそれだけのポテンシャルがあると思う。

 とはいえミューラー・トゥルガウのさっぱりして肩の力の抜けた、極めてフードフレンドリーな(オーストリアで言うならウェルシュリースリングと似たポジションの)軽い味は、これぞ地元密着型協同組合ワイン、という性格で、心持ちの純粋さが素晴らしい。デイリーワインかくあるべしと思った。ゲヴルツではなくただのトラミナーもあるが、それもまたいかにも東欧的で、淡々として地味な性格の中に華やぎがある、なんとも分かりにくいがあとを引く個性。ジュラの非フロール・サヴャニャンやアルザスのクレヴナー・ド・ハイリゲンシュタインのファンなら、これは好きなはず。余計なことを考えていない典型的な協同組合味ゆえに、ますます落ち着く味になっている。

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 セラーの中で興味をひかれたのが、果汁を樽に運ぶためのパイプ。普通ならステンレスだが、ここはガラスだ。むき出しだから何かぶつかったら大変なことになるが、中身が見えるし、金属よりも味に影響が少ないだろうし、いいアイデアだ。GDR時代にはステンレスが大変に高価で、西欧のようなパイプが使えなかったというが、現代的な視点から再び広めてもいいのではないか。

【ドイツ/ザーレ・ウンストルートのワイナリー】ドイツ最大のスパークリングワイン生産者「ロートケプヒェン・ゼクトケラーライ」に続く

 

 

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