コラム 2016.05.23

アルト・アディジェのピノ・ビアンコ ナルス・マルグライド

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2016年4月、ヴィニタリー訪問の後に向かったワイン産地は北イタリア、アルト・アディジェ。現在イタリアの全ワイン生産の1%という小さな規模のこの州のワインは日本のイタリアワインブームのなかでなかなか注目を浴びずにここまで来ているように思います。白ワインを中心に品質はもちろん、ブドウ品種のバリエーションの豊かさもイタリア随一の産地として非常に個性的ですが、今まで日本に伝えられてきたのはその一部分に過ぎないように思います。

意外と知られていませんが、ガンベロロッソのトレビッキエリの数では生産量の少なさの割に、ピエモンテ、トスカーナに次いで多く、全体の高品質を裏付けています。個人的には日本のレストランやワインバーで、シャルドネやソーヴィニヨンといった国際品種に限らず、多様なワインがもっと提供されてほしいと思います。

今回まず伺ったナルス・マルグライドは州の北西の町メランにほど近いナルスと南端のマルグライドに渡って約150haの畑を所有しているこの地域としては規模の大きい生産者。

アルト・アディジェは世界で最も共同組合が機能している産地と言われていますが、地域の人と話していて日本でイメージする組合とのギャップを感じます。組合というと、どこか没個性的な中庸なワイン生産をイメージしてしまいがちですが、この州でいうところの栽培農家とワイナリーの関係はブルゴーニュの厳格なネゴシアンのような、適切な緊張感を持って分業している事を会話の端々から感じさせられます。

※南向きの標高約600mのシルミアン畑。なかなかの斜度。

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ナルス・マルグライドのワインはエントリーレベルの「クラシック・レンジ」、品種ごとに秀逸な畑を選んだ「クリュ・レンジ」、フラッグシップとなる「バロン・サルヴァドリ・レンジ」の3つに大別されますが、多様な品種が植えられ、ドイツでもオーストリアでもないアルト・アディジェらしさということでいえば、「クリュ・レンジ」が圧倒的にオススメ。この州のワインで日本に輸入されているものの多くは「クラシック・レンジ」と「フラッグ・シップ」です。価格的なことと、国際市場の基準で造られていることを善とするのは他の産地の輸入ワインにも同様のことがいえると思いますが、多くのワイナリーで「クリュ・レンジ」が幅広い葡萄の個性を無理せず表現しているように感じます。

このワイナリーを代表するのは、何といってもナルス近郊のシルミアン畑で栽培されるピノ・ビアンコ。イタリア最高の白ワインにも選ばれた、バランスと大きなスケールを兼ね備えた秀逸な一本。フランスでいうところのピノ・ブラン種ですが、ブルゴーニュはもとよりアルザスでも主役にならない品種。このブドウを考えたとき、ドイツとアルト・アディジェでその可能性を開花させている品種だといえます。

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その他、2012年ヴィンテージからリリースされたリースリング”ピツォン”。こちらもシルミアンにほど近い輪郭のハッキリした酸と丁寧に造られたことの伺える、曖昧さのないキリっとした立ち姿はアルザス、ドイツ、オーストリアといった他の産地とは違った、良い意味での生真面目さがアルト・アディジェらしさを想起させてくれます。

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ゲヴェルツトラミネール”リラ”は一説によるとこの品種発祥の地トラミンの畑から造られています。ある程度の規模でトラミンにゲヴェルツを栽培しているのは現在5社程度。そのなかでもエレガントでいて控えめ、仰々しくないゲヴェルツを表現しています。

※ワイナリーにて、日本のサクラ・アワードの賞状と盾が飾られていました。IMG_2573

アルト・アディジェのワインは日本でまだまだ知られていないと思うのは、地理的な事情もあるように思います。隣接するスイスやオーストリアやドイツからほど近いということもあり、避暑地としても利用されているため、ワイナリー直販が割合として大きく、それなりの規模でなければ輸出をしません。(話を聞いた未輸出ワイナリーでは10万本程度が直販で売られる。ナルス・マルグライドも20%以上を直接販売)また、ナルス・マルグライドを古くから知る人から現在の高評価は醸造長のハロルド・シュラルフが加わってから(2005年~)ではないかという話も伺うことができました。確かに評価本の常連になるのはそれ以後の事で、そういった品質の向上は他のワイナリーも含め、産地全体の話としてそれほど古いことではないのかもしれません。

今後、アルト・アディジェのワインがイタリアの銘醸白ワインの産地(個人的にはラグレインやスキアーヴァも好きですが)として、他の冷涼産地と並んで楽しまれることを願っています。

※こちらのワインに関しましてのお問い合わせはmiyaji@wine-communicate.com 宮地までお気軽に。

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