コラム 2019.10.17

ジャパン・ワイン・チャレンジ最高賞 グラーフ・デゲンフェルトのトカイ・アスー・6プットニョス 2013

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 2019年のジャパン・ワイン・チャレンジの最高賞はこのトカイ・アスー・6プットニョス 2013。『日本で飲もう最高のワイン2019』のプラチナ賞もこれ。いいものはいい、ということ。

 ジャパン・ワイン・チャレンジのトロフィーワイン・テイスティングの時も、最終的な最高賞選定テイスティングの時も、このワインの高貴さ、姿かたちの美しさ、余韻の長さは圧倒的。フルミント独特のぴしっとした酸と火山性土壌の軽やかで上昇力のある香りとミネラル感ゆえ、ブラインドで飲んでもこれがトカイであることは明らかだった。別に私はトカイに特別に肩入れするつもりはないし、ハンガリーワイン=トカイとみなされてそれだけで終わってしまう日本の状況には疑問を呈したいのだが、それでもこのワインの完成度に対して疑問をもちようがなく、最高賞は即決だった。

 共産圏時代以来のトカイのファンならば、これはあまりに西欧的に洗練されてハンガリーっぽくないし、畑の前を流れる濁った川に住むフナやナマズやコイのフライやスープという典型的トカイ料理となんの接点もない、と言うかも知れない。しかしトカイはもともとこの地方の地酒だったわけではないのだから、むしろグラーフ・デゲンフェルト(ドイツ南部シュヴァーベン地方からトカイに移住)の神聖ローマ帝国的な味(ある種のウィーンっぽさ)のスタイルほうが、本来あるべき王侯貴族ワインらしいとも言える。このようなトカイの本質規定の吟味がないと、このワインが最高賞に値するのか否かの最終的な判断はできないが、私はこれが正しいありようだと考えた。最高賞とは、ただおいしければいいというものではないと、私は理想論的には思っている。
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 このワインの興味深い点は、マード的な腰の強さとタルカル的な軽やかさの両立である。マードだけではもっと重たい味になるだろうと想像する。実際にこのワインにタルカルのレスが含まれているかどうかは知らないが、そう譬えられる味がするのは事実だ。ともあれこのワインはいかにもグラン・クリュの味がする。出品された他の甘口ワインで同様なグラン・クリュ性を感じたのは、当然かもしれないが、シュロス・ヨハニスベルクのベーレンアウスレーゼ。しかしトカイと比べると風格、酸の美しさ、垂直性といった点で若干見劣りがした。もちろん大変に高度なレベルでの話だ。トカイがいかに優れた甘口ワインなのかということだ。

 それぞれのカテゴリーのトロフィーは興味深い。特に、新世界白が山梨の甲州、新世界赤がモンダヴィのナパ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨン、旧世界赤がジェラール・ベルトランのブートナック・ラ・フォルジュ、スパークリングがカリフォルニア、といったあたり。それぞれ、卓越した垂直性とミネラル感、陰影のある複雑さと厚み、圧巻のエネルギー感と構造、整ったエレガンスとビビッド感が印象的だった。どれを買っても満足できる。

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