3月9日、六本木の格之進Neufでの三社合同の試飲会に伺ってきました。
こちらのお店は岩手県を拠点とする熟成肉のお店。高橋喜和さん(写真右、高橋葡萄園)、熊谷晃弘さん(写真中央、神田葡萄園)、沼田実さん(写真左、テイスト&ファン
)は岩手県でワイン造りをしている方々です。
沼田さんはワイン業界では大先輩にあたり、ワインコンクールでご一緒させていただいたご縁で、ご自身のワインの(高橋葡萄園さんでの委託醸造)ファーストヴィンテージ!!のお披露目にお呼ばれいただきました。
ロジカルで”ハッキリした物言い”の沼田さん。サービスから入って、好きと情熱一発でワイン生産まで実現した熱量にはワイン業界の先輩として尊敬しています。
リリースしたワインは1銘柄。「キリノカ リースリングリオン2016」。※ボトル写真は良いのが撮れなかったので載せません。。トップ写真をご参考のほど。
リースリングリオンはリースリング×甲州三尺の交配品種。収量が少なく、病気に弱いリースリングを地場の甲州品種で補完したといわれ、現在は岩手県を中心に栽培されています。
キリノカは一部、樽発酵樽熟成とのこと。高橋葡萄園さんの南向きのリースリングリオンからリースリング的個性と甲州的個性を引き出すことに苦心した力作。甲州種のフェノール的要素は広くネガティヴに捉えられており(おそらく多くの方が日本の白ワインにネガティブな印象を持たれている要素です)、これを一般的にはマイナス作用の酵母でコントロールします。すると、よりすっきりとした印象(悪く言えば没個性)のワインに仕上がるので、日本食に合うみたいな話になります。
沼田さんが言うには、糖度がもっと欲しいとも思うが(NZとかでやってた方なのでね)、フェノール類に影響を与える種子部分の熟度が充分なため、ひとつのロットはフェノール類を引き出すような発酵を行っている。そしておそらく、樽発酵という酸化的アプローチ(これもブドウが健全に熟していなければひねたような香り味のするワインになります)でふくよかなボディを、そしてリースリングリオンの和製の柑橘的性格が輪郭をカタチつくっているという、ロジカルで”ハッキリした物言い”、豊かな経験に裏打ちされた沼田さんらしいワインという印象を受けました。
高橋葡萄園さんのリースリングリオンも北側の畝(ワイン名リースリングリオン。青りんごのようなフレッシュさが性格を造っていた印象)、南側の畝(ワイン名フロイデ。より柑橘的なヴィヴィッドな酸が印象的。どうなんでしょう?青りんごと柑橘というと、柑橘のほうが皆さん甘酸っぱく感じるものなのかしら)と分けて造られていて、キリノカとフロイデ、リースリングリオンと三者からは異父兄弟的なグラデーションを感じることができました。
おそらくキリノカは生産量も少ないため、あまり目にすることもないかと思います。けれど人柄を知る僕にとっては温度感の十分に伝わるワイン。貴重なテイスティングの機会で、またお目にかかりたいと振り返っています。※初回分は初日で完売とのことでした。
もうひとつ気になったのは、神田葡萄園さんのケルナー中心の混醸”マール2016”。日頃ヨーロッパのワインに親しんでいる方に召し上がっていただきたい1本。円さとバランス(果実、酸、フェノール感などの)から個人的にはイタリアやオーストリアのフードフレンドリーな白ワインを想起させられました。
あと最後にもうひとつ、キャンベルアーリーのロゼは高橋葡萄園さんも神田葡萄園さんもポジティブなキャンディフレーバー。ラブルスカ感はあまり好みではないけれど、本当に丁寧な仕上がり。ケルナー中心の混醸を飲んだ後に、ふと思うのは白ブドウとの混醸に可能性はないのかな?