コラム 2016.06.13

東海岸ポルト・ヴェッキオという個性 グラナイオーロ

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※写真はグウェネル・ブシェールさん。オーガニック果樹園を所有していた彼の父アンドレは1974年にブドウ栽培をオーガニックで始めた。当初は協同組合にブドウを売っていたが、92年には協同組合がドメーヌ・ド・グラナイオーロ名義で特別なオーガニック・キュヴェを発売。彼ら自身のワイナリーは2003年に設立。グウェネルさんはもともとは地質学を勉強していてワイナリーを継ぐ気はなかったらしいが、方向転換して醸造学を修め、フランス国内とオーストラリアで研修を積み、2000年にドメーヌに戻る。

 コルシカ訪問の前、モンペリエで行われたオーガニックワイン見本市、ミレジム・ビオに行った。そこには当然ながらドメーヌ・ド・グラナイオーロも出展しており、ワインを試飲することができた。正直言って、ざらざらいがいがしていて、おいしくなかった。何年か前のミレジム・ビオで飲んだ時も実は同じ印象だった。コルシカでアポを取っているのにまいったな、と思った。

 しかしドメーヌ・ド・グラナイオーロで飲んだ同一のワインはまるで別物といっていいぐらい素晴らしかった。高い世評もこれなら納得だ。この手のことはよくある。試飲会で飲むワインは往々にして生産者のもとで飲むよりおいしくないし、だから試飲会でワインの質を判断するのは危険を伴うのだが、それでも差が少ないものもあれば、敏感なものもある。ワインがナチュラルになるほど、ワインは生き物に近くなっていき、飲む人の精神状態や天気や周辺の状況等々を映し出し、味わいが大きく変化する。彼らの畑は創業時1974年からずっとオーガニック(コルシカのみならず、フランス本土でも70年代からのビオはかなり少ない)。認証取得も87年と早い。筋金入りのオーガニックワインだ。とはいえ人間に譬えるならドメーヌ・ド・グラナイオーロのワインは心臓に毛が生えているタイプの性格ではないということだろう。

 ドメーヌ・ド・グラナイオーロはコルシカ島の南東、コルス・ポルト・ヴェッキオに位置する。このエリアの土壌は花崗岩質で、アジャクシオやサルテーヌと同じだが、東海岸は西海岸よりはるかになだらかな地形で、平地の畑も多い。ポルト・ヴェッキオが西海岸の諸産地と大きく違う点は気候だ。サルテーヌの年平均気温が14・1度、年間降水量が639ミリなのに対して、ポルト・ヴェッキオは15・7度と550ミリ。グラナイオーロの当主であるグウェネル・ブシェールさん曰く、「年によっては400ミリしか雨が降らない」。コルシカの中でも暑くて乾燥しているのがポルト・ヴェッキオだ。だから必然的に収量は少なく、グラナイオーロではヘクタール当たりたったの20から30ヘクトリットルしかない。

 もちろんそれがワインの個性となる。一言で言えば、パワフルで筋肉質。タンニンは西海岸より明らかに強く、固い。西海岸の花崗岩エリアではシャッカレロが主体なのに対して、ポルト・ヴェッキオでは赤はニエルチオで造られるから特にそうなる。グラナイオーロだけではなく、ドメーヌ・トラッチアでもドメーヌ・フィオール・ディ・レッチでも赤はニエルチオ主体だ。グラナイオーロのホームページを見るとシャッカレルは花崗岩土壌によく合うと書いてあるから不思議ではある。

※機能的なワイナリー設備。生産の中心となるトラディションとモニカのふたつのキュヴェはステンレス発酵・熟成される。

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 商品構成は、キュヴェ・トラディション、キュヴェ・モニカ、Le Jの3つのラインから成る。試飲したキュヴェ・トラディション2013年はステンレス熟成されたニエルチオ単一のワイン。タンニンはしっかりしているもののエグみがなく、温かくソフトな果実味があり、酸が低めで、余韻には心地よい甘さが広がる。土っぽい風味が地酒っぽく、しかし泥臭くはならずに香りの抜けのよさもあり、グウェネルさん曰く、「典型的なポルト・ヴェッキオ」。軽めの味の牛肉料理が食べたくなった。造りはトラディションと同じだがシラーをブレンドしたキュヴェ・モニカ2014年はよりシリアスで硬質。そして95%ニエルチオ、5%シラーの、樽熟成されたトップキュヴェであるLe J 2012年は、現時点では樽が若干強いものの、スケール感が大きく余韻が大変に長く、高密度ながらも軽やか。5年後には樽が溶け込んでいてバランスがよくなるだろう。

赤ワインの質は2015年ヴィンテージからさらに向上するに違いない。というのも彼らはミニュステッロ品種を植え、このヴィンテージからワインとなって、ニエルチオにブレンドされるからだ。タンクからミニュステッロ単一のワインを飲んでみると、濃密で、とろりとして、キメが細かく、重心が下の味。ブラインドだったらグルナッシュかなと思うような個性。確かにニエルチオとは相互補完的で、ワインはよりなめらかで大きく、タンニンも上品になることだろう。

※Le J ブラン 2014年。2004年に登場したトップ・キュヴェであり、南コルシカ屈指の白ワイン。樽発酵ながら、極めてミネラリーで凝縮度が高いため、ワインが樽に負けることがない。 日本未輸入ですが、これを読んで初輸入ということになることを願います。(編集)

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 南コルシカでは白ワインがおいしいとは普通は思えないのだが、300リットル容量のセガン・モロー製フレンチ・オーク樽で発酵されるLe Jの白、2014年は別格だ。極めてパワフルな大きなスケールのワインだが、意外やアルコールは低く、12・5度から13度だという。重心が下で安定し、パイナップルやオレンジの香りも積極性があり、飲んでいて気持ちが良いし、焼いた豚肉のような料理が脳裏にちらつき、お腹が鳴ってしまう。これも現時点では樽が強めだから、あと数年して樽が落ち着いたらどんなにおいしいだろうかと思う。<田中克幸>

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