コラム 2017.03.14

シャンパーニュ・シャルル・エドシック

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2014年に亡くなったThierry Rosetさんの後を継いだシャルル・エドシックの醸造長、Cyril Brunさんが来日し、ブリュット・レゼルヴのスペシャル・パッケージ・ジェロボアム、コスモポライトの発表会を、東京アメリカンクラブで開催しました。

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 シャンパーニュのイベントや試飲会に招かれたのは数年ぶりですし、グラン・メゾンのシャンパーニュをテイスティングする機会はほぼ皆無なので、喜んで参加させていただきました。特に今回はシャルル・エドシック。十数年前にメゾンで試飲して大変に気に入りました。その味は今でも鮮明に記憶しています。
 さて久しぶりに飲んだシャルル・エドシック。リッチで、粘性が高く、重心が低く、角が丸いピラミッド型をしていて、熟成風味がありながら疲労感がなく、旨みが十分に乗った味。NVのワインとはいえ、まるでヴィンテージのような複雑性、スケール感、構造、余韻。明らかに平均格付け%が高い味がします。...
 基本的には記憶と同じですが、そしてそれはメゾンのスタイルの維持という点ですごいことだと思いますが、品質的には明らかに向上しています。十数年前よりキメが細かく、酸のビビッド感が増し、余韻も伸びていますし、ゆったりしたくつろぎ感の中に躍動感があります。このような変化をもたらす理由は、まずは農薬使用量の減少しか考えられません。というわけでシリルさんに聞くと、「この10年間で農薬は半分にした。自社畑では除草剤の使用は極小」。そういう味がします。
しかし自社畑比率は10%しかありません。90%のブドウを育てる180軒の契約農家との連携が肝要です。「彼等とは長期契約を結んでいて、みんな誠実に付き合ってくれる。家族みたいに思っている。さらに、よい結果を出すためには農家への高い目標設定や適切な動機付けが大事だ」。契約農家の農薬をどうやって計画的に減らしていけるのかを考えて欲しいと思います。
 シャルル・エドシック・ブリュット・レゼルヴの味わいの特徴を見れば、ヴェルズネイとアンボネイが入っていることは確実。聞いてみると、「そのふたつは大切。特にアンボネイが多く含まれる」。丸みやソフトさは確かにアンボネイです。普通ならシャルドネはもっと青リンゴ的、レモン的な風味と、タイトな芯と、カチッとした酸をもたらすでしょうが、このワインにおけるシャルドネは黒ブドウ的な粘りを持っていて重心が低く、酸がまろやか。よく見られるメリハリをつける方向には行きません。「これはどう見てもメニルとトレパイユは入っていませんね。グロウヴが入っているでしょう?」と聞くと、「いや、オジェとヴェルチュ」。グロウヴはまあオジェのミニ版ですし、丘の東側と西側です。オジェもヴェルチュも粘土が多いのが特徴。だからピノとの一体感があるわけです。
 最も特徴的なのはピノ・ムニエです。私が、「ピノ・ムニエの使い方にはふたつある。ひとつはピノ・ムニエのがっしりした堅牢で足腰の強い側面を生かす方向性で、それならフェスティニー村周辺のピノ・ムニエを使うでしょう。もうひとつはピノ・ムニエのフルーティでやさしい側面を生かす方向性ですね」と聞くと、「我々は後者の立場。ピノ・ムニエはVermeuilとVille-Dommangeのものを使う」。前者はランスの西10キロ、後者は5キロほどのところにあり、モンターニュ・ド・ランスの北側です。「砂質土壌のところですね!」、「そう、砂」。この地の砂質土壌のピノ・ムニエはきめが細かく、ふわふわとチャーミングで、重心が上です。これでお分かりのとおり、シャルル・エドシック・ブリュット・レゼルヴは、味わいの下半分にピノ・ノワールとシャルドネの味があり、上にピノ・ムニエがある(普通ならピノ・ムニエはもっと中心部)。だからワインの味の上部が丸くなり、また赤リンゴ的な風味が上部に載るのです。これはとても特徴的で、他では得難い個性をつくりあげています。
 しかしこれだけではちょっと締まりがなくなります。ここで活躍するのが「オーブのブドウ。使いすぎると青臭くなるし、苦みが出るが、5%程度入れると構造がしっかりする」。オーブは質感が粗く、マルヌのブドウのキメの細かさを邪魔しがちで、一体感がなかなか生まれないのですが、このようにアクセントとして入れると、確かに腰の強さが出るような気がします。見事な使い方です。
 「シャンパーニュはアッサンブラージュのワインと言われますが、こうして飲んでみると、テロワールのワインだというのは明確です」と言うと、「そりゃそうですよ、クソみたいなブドウからはクソみたいなワインしかできません、すみません言葉が汚くて。でも本当なんです。クソはクソです」。
 どっしりしてくつろげる大人な味のシャンパーニュが欲しいなら、特に私がここで述べてきたようなことが常識として分かるシャンパーニュファンにとっては、シャルル・エドシック・ブリュット・レゼルヴは筆頭おすすめのワイン。輸入元の重役さんが「よく売れています」と言っていましたが、当然だと思いました。

コチラの記事は日本橋浜町ワインサロンFacebookページより転載しています。

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