コラム 2017.10.26

ジャパン・ワイン・チャレンジを振り返って~その5ロゼ・シャンパーニュ~

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その4番外ボルドーはコチラ

Silver

Champagne Lanson Rose Label Rose Brut NV(仏シャンパーニュ)

 

田中:それではそろそろこのランソンのシャンパーニュを議題にしましょうか。

ひとまず彼女にシャンパーニュに関して話を聞こう。これはシルバーです。

 

川口:このランソンに関してですか。色が心躍る色ですね。ただのピンク色よりも魅力的な。(笑)

 

田中:なんかあれだねぇ、ベテランの前で話す若手芸人のようになってるよね。

 

沼田:それはやばいね。ただこれってランソンでしょう。MLFしてない。

 

田中:ちょい待った。君がコメントするな。川口さん、このワインについて五分話してみてよ。

 

川口:月並みな感想ですけど、何時間も飲んでいられるようなバランスの良さ?

ピーンと張り詰めた緊張感は素晴らしいですよね。果実味からくるエレガントさが良いところでは、と。

 

宮地:ワインの良いところをいきなり自分の文脈でしゃべるってまぁまぁ難しいんじゃないですか。

 

田中:難しくありません!五分で終わらないくらい伝えなきゃ。思うところを言葉にしていくんだよ。絵を見た時にその画家を知らなくても、絵の具の使い方や色々思うところあるだろう。

 

沼田:まぁいみじくも田中さんが言うように絵を見た時のように、初めの印象があるのだと。それのひとつひとつに自分なりの理由をつけていくという行為。そういうところで見ていける、画像で判断しているようなもので。川口さんも良いところを探そうとして、そこに理由を見出すというかね。結論は同じかもしれないけれどたどる道は違うわけで。最初から言ってる事なんだけどね。

 

田中:良いところだけ探したって、正当な評価にはならない。悪いところもあるわけだから。表裏一体でどちらだけでもない。

 

川口:ロゼシャンパーニュらしさが少ないとは思います。それほど苺系の香りが前面には出ていないですよね。良い意味で控えめに感じます。

 

田中:アッサンブラージュのロゼだったら、そんなに苺系にはならないでしょう。仮にロゼに苺を期待しているなら、それはロゼのひとつの面にしかすぎないのであって、それがないから悪い、あるからよい、みたいな方向になるのはおかしいでしょう。

 

宮地:これは3品種のブレンドで、ピノノワールの比率が高いでしょう。

 

田中&沼田:だろうね。

 

川口:ロゼシャンパーニュらしさって何なんでしょうか。

 

宮地:さっきサーモンピンクっておっしゃったじゃないですか?これもっと鮮やかなロゼシャンパーニュもあるわけで、どれが好きかという話をするとランソンという大手メゾンを僕が好きでないというのは置いておいて、この淡いロゼの主張のなさはロゼシャンパーニュの魅力としては希薄で、正直シルバーなの?と思ってしまうワインです。

 

田中:僕もブロンズ。

 

宮地:シャンパーニュなんて、言ってしまえば何でも美味しいんだから、それこそ何故か選外になるワインもあるなかで何故これがシルバーなのかは疑問です。シャンパーニュの欠点なんてそもそもありえないわけで、加点がなければ賞は取れないはずなんですよね。

 

田中:工業製品だからね。そう、欠点なんてないよ。

 

沼田:僕はシルバーっていうのは妥当な評価だと思う。ランソンの造りっていうのは一貫しています。自社畑はモエ・エ・シャンドンに取られてしまったから、大手ですが自社畑から造られるわけではない。それでもトロフィーを獲れる力があるブランドです。樽をベースワインのところで使っているのかな、そこからの複雑さは感じられますよね。

 

田中:よくできたワインです。

 

沼田:ランソンというブランドがね、あえて選ぶブランドではないのかもしれないけれど、でも実際にこれはシルバーを獲っているというね、評価は高いよね。客観的に、ブラインドで。

 

田中:私はランソン好きですから。ランソンのナーバスさが好き。ランソンは寒い味がするのがいい。

 

宮地:沼田さんの話を聞いてランソンらしさを考えた時に、非常にドライだなとは思いますね。他の大手メゾンに比べてドライ、フレンドリーさやふくよかさに欠けるというか。

 

沼田:リンゴ酸が強いよね、MLFしてないからね。

 

宮地:この淡さとドライさは、スティルワインを愉しんでいるような気になりますね。

 

田中:そう、ランソンに期待するものとロゼシャンパーニュに期待するものとの乖離が問題なのです。自分にとっては。ランソンは白のメーカーでロゼのメーカーではない。

 

沼田:ということはロゼシャンパーニュに求められる個性というのは何なんでしょうかね。

 

川口:フルーティーさや、華やかさ。

酸もきりっとしっかりしていて、この控えめ、華やかに過ぎないロゼシャンパーニュのスタイルは好きですけれど一般消費者の求めるロゼシャンパーニュのスタイルとは違うのかなと、もっと色がピンク色で華やかで、香りが前面に出てというタイプの方が求められているのでしょうか。個人的には好きですが。

 

宮地:柔らかさはあるんじゃないですか。シャンパーニュってそもそも硬質なワインが多い中、柔らかさは際立っていますよね。

 

田中:柔らかさが際立っていることはシャンパーニュに求められている美点なのか。

 

宮地:いわゆる大手メゾンの柔らかさってドサージュの量に左右されるわけですよね。このくらいドライでない方が好まれるだろうという線引きがそこにあると思うのですが、ドサージュ10g程度。これはその意味ではおそらくドサ―ジュ少なくて、けれど酒質として非常に淡く柔らかく仕上がっている点がきっとフードフレンドリーと感じさせるところだろうなと思います。

 

田中:柔らかいのがいいなら、フランチャコルタでもいいじゃない。そもそも柔らかな質感とフードフレンドリネスがイコールだなんてシンプルなロジックでは説得できない。どんなワインだってフードフレンドリーだよ。ある意味合いにおいては。

 

沼田:もっとプレサイスな発言を求めてるわけね。そこのところ、川口さんは頭の中には言いたいことがあるのかもしれないけれど、言葉にするのはひとつのテクニックみたいなところもあるから。その辺かなぁ。

 

川口:イメージを言葉にする訓練ですかね。

 

沼田:そうそう。黒服着てるソムリエだってね、当たり前のことのようにフォアグラにソーテルヌとか言うけどね店でやったり教科書に載ってるだけで、普段やってないから、そこに生活感、実感が伴わないよね。

 

田中:言葉にしなければ君の意見はひとつも伝わらずに終わってしまう。一本につきだいたい30秒とか1分しかテイスティングの時間が与えられないのだから、飲んですぐにイメージを描けないと。

 

宮地:主体的にイメージするのって難しいですよね。議論は面白いもので、誰かが大したことないと言う、自分がどう思う、それを交わすだけで立体的になると思うんですよ。まぁ概ね僕はシャンパーニュ好きじゃないんですけど。

 

沼田&川口:珍しいですね。

 

宮地:シャンパーニュそのものは美味しいとは思うんですけど、多くの人があまりにもブランドで飲んでるのを見てると、ちょっと具合が悪くなるというか。

 

沼田:まぁそういう高級ワインはあるよね。あんまり美味しいと思わない思い浮かぶワインはある。

 

田中:まぁその話は社会心理学の話だから、ここでの議論ではない。ここは、このワインのクオリティの話をしてくださいよ。

 

沼田:そうね、このワインはだれないのがいいですね。酸の高さということもあるだろうけどドライで、そのままフラットな状態をキープしてる。食中酒としての役割がイメージできるし、何時間でも飲み続けられるということに通じるかもしれない。

 

田中:確かにだれない。このだれなさはプラスポイントだ。

 

沼田:ロゼシャンパーニュとはなんだという話ではね、ボランジェがなかなかロゼを造らなかったでしょう、おそらくボランジェの目指すスタイルとロゼシャンパーニュというものが重ならなかったのだと思う。その辺がロゼシャンパーニュらしさを考える上ではなにかヒントになるんじゃないかな。ボランジェの出した結論はロゼシャンパーニュだとしても必ずしもフルーティーである必要はないという事だと。

 

宮地:そういった文脈で考えると、このほんの数%のアッサンブラージュ、ドライであるべきシャンパーニュのなかでのロゼという位置づけはポジティブな捉え方もできますよね。ボランジェ的考え方のロゼのひとつの在り方というか。

 

沼田:それでいくとピノノワールをブレンドすることの意味はフルーティーさを加えることではないかな。

 

田中:ところが白に入れる前の赤ワインはフルーティーじゃないでしょう。

 

宮地:あぁ僕好きですけどね、あの神経質なタンニン感じるようなピノノワール。

 

田中:そうでしょう。神経質ですよ。コトーシャンプノワ飲んだら、フルーティーなのはほとんどないよ。渋いでしょう、あれはストラクチャーのワインですよね。だいたいどこの村の赤ワインを入れるかといえば、代表はブジィ・ルージュでしょう。ブジィどんな味かって言ったら、ごつごつしてる。だから見方が間違ってるよ。セニエのヴァレ・ド・ラ・マルヌのピノムニエなんてフルーティーだと思うけれど。

 

沼田:けれどブレンドの方が結果としてフルーティーになっている。例えばドンペリのロゼなんかを飲めば、とてもストロベリーが前面に出ていて、あれはひとつのスタンダードですよね。

 

田中:僕はそう思わない、白と飲み比べた際、ロゼの方がストラクチャーがある。赤ワインにはタンニンがあるのだから、当然赤ワインのタンニンはワインのストラクチャーに反映される。

 

沼田:確かにドンペリというワインは、華やかなワインかというとそうでもなくて骨太な印象がある。

 

川口:今までの話を踏まえると、ちょっと弱いかなと思います。ストラクチャーを感じるワインではないと、他の大手メゾンに比べ赤ワインの要素は少ないと思います。

ロゼシャンパーニュとしてはいわゆるティピシティに欠けるのではないかと。より色調の濃いものとは違って。

 

田中:それはセニエじゃないからって話になってしまう。シャンパーニュとは何かって言ったら、まずは白亜の味でしょう。

 

宮地:つまりストラクチャー、緊張感?この柔らかさが減点の対象になるってことですか?

 

沼田:そういう意味ではクレマンドブルゴーニュっぽいなと思ってしまった。キンメリジャン。

 

田中:クレマンドブルゴーニュっぽいていうのは当たってますよ。締まりがないというかね。そういうテロワールのところのブドウなのでしょうよ。それがランソンのスタイルと違和感がないか?本来緩やか、ふくよかな人をコルセットで締めているような違和感を覚える。

 

宮地:そういう表現って本当に難しいなと思うんですよ。僕の中ではドライだけれど柔らかいとなる。もちろん語彙は少ないなと思いますよ。けど言ってることは同じことを指してるんですよね。

 

田中:だからそれを評価に結び付ける時に、良しとするのかどうかにかかってるんだよ。

 

沼田:これ普通のグループのフライトでやるとしたらこの時間で20本くらいは審査してるよね(笑)

 

田中:まぁそうなんだよ。けど宮地君とかはさ、これを柔らかいというけれど、僕は真ん中がないから、柔らかく感じさせるだけじゃないかと思うんだよ、何故真ん中がないか?収量が多いからだ。他のメゾンはあと1、2gのドサージュで抜けを補うだろうに、このワインは辛口であることにこだわるから、収量の多さをカバーできてないんじゃいかと。

 

宮地:そんなに畳みかけられたらなんにも言えませんよ(笑)

 

田中:僕なんて優しい方だよ。何故僕のこんな低いレベルの話を論破できないんだ?

 

沼田:そういうところをさ、ロジックで論破する必要があるんだね。二人だったらそのくらいの知識は持ってるんじゃないの?俺はできるよ(笑)

 

宮地:それでいえば、一貫して話に出ているのは、ドライ、淡い、柔らかい。この三つですよね。他の大手メゾンよりもドサージュの量は少ないと想像できる、それがおそらくハウススタイルであると、そのポイントが「ロゼ」、「シャンパーニュ」というキーワードとずれているというのがこのワインの欠点だという話になりますよね。

 

沼田:でもこれそんなに悪くないんですよ。田中さんが言っている中身のスカスカ感があるというけど、それってそんなに難しいことでなくて、クリュグはMLFやってないというけど、あれはMLFを起こさせてないだけで、起こっているかどうかは別の話なんですよ。ゴッセもそう。でもランソンはMLFを起こさせないというのがレゾンデートルなんで、何をしてるかというとベースワインのところでしっかりフィルターかけます。そうすると乳酸菌とともにうま味も除去される。だからミドルが抜けるんですよ。

 

田中:それで言うならビルカール・サルモンだって同じだが、ロゼの仕上がりは違うよね。抜けていないだろう。

 

沼田:やっぱりそれはヴァレ・ド・ラ・マルヌのムニエを使ったりといった、畑を持っているかどうかという話になる。ビルカール・サルモンの生産量の方が小さいし。

 

宮地:まぁ自分の話に戻すと、そもそもこのワインは初めから何故シルバーかわからないという立ち位置に僕はいますよね?ランソンかどうかは別にして、僕の感覚で言えば照準が合っていないというのが初めの印象なんですよね。

 

田中:そうだと思う。1gドサージュが多かったら、ピノムニエの比率が高かったらと思う。この薄さが目立つのが疑問。

 

宮地:淡い=薄い、など言葉の難しさはありますよね。感覚値を言葉にするなかで、近しいことを言っているにも関わらず、違う言葉になる。本当に議論は難しいと思います。

 

田中:ですから、単語では伝わらないから文脈をつくりなさい、五分話しなさい、って言っているのです。でも日本語でもこれだけ難しい。これを英語でやれ、だからね。まぁシルバーでも否定はしないですけど、審査のシーンが想像できます。自分が16だと、周囲が17.5の人がいて、17の人がいて平均すると17点でシルバーですと。いかにもそんな議論でしょうよ。

 

沼田:うーん。シルバーらしいシルバーなのよ。

 

川口:可もなく不可もなくということですか?

 

沼田:まぁそうなんだけど、可が少しあるというね。皆がゴールドではないよねと納得する味なんですよ。長年やってるとね、メダルの色が思い浮かぶんだけど、シルバーはすごくわかる。これいいなっていうのと、これはゴールドじゃないな、シルバーだなっていうのはわかる。

 

川口:瞬時に?

 

田中:そうだよ。最初、飲んだ瞬間からわかるんだよ。だから最初から僕は主張しているじゃないか、WSETの方法論で要素をひとつづつチェックしていけば結論が出るわけではないと。結局沼田さんも僕と同じやり方ではないか!

 

本日お集まりいただいた皆様のご紹介
numata

沼田実さん
ワイン輸入会社での勤務経験、醸造家としての海外実習およびソムリエ経験を活かした多彩な講義内容が特長。特にコンテストの審査員として培われた論理的テイスティングには定評がある。
テイストアンドファン株式会社代表取締役
WSET®認定Level4Diploma
公式プロフィールはこちら

田中克幸
田中克幸さん
某大手外食企業の取締役として渡米、帰国後数々のワイン雑誌の主筆を務め
独自のワイン観で、生産者にも舌鋒鋭く切り込む。ジャパン・ワイン・チャレンジ副審査委員長。

kawagutiazusa
川口梓さん
「もっと!ワイン」代表
WSET認定Level4 Diploma
ジャパンワインチャレンジ審査員
大学在学中に留学先のリヨンでワインに目覚める。
都内の大手酒販店、ワインのインポーターで約17年間勤務後、2017年に独立。ファインワインの消費者の裾野を広げるべく、個人販売「もっと!ワイン」の開業準備中。

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