コラム 2017.10.26

ジャパン・ワイン・チャレンジを振り返って~その3モスカート品種~

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その2シャルドネはコチラ

Silver

Moscato 2016/Deakin Estate(オーストラリア)

 

宮地 モスカートは日本ではあまり、定着しないワインといっていいですかね。シャルドネのところでも話になりましたが日本人は辛口が好きという事でいいですか?

 

田中:口ではね。けど残糖ワイン好きな筈よ。これもカテゴリーAでシルバーでしょう。どなたが審査しておられるか知りませんが、見事な結論ですよ。

 

沼田:いいワインだと思いますよ。良いワインだと思うけど、ターゲットが日本のマーケットだと見えにくいワインなんだと思う。

 

田中:ターゲットうんぬん以前に、ワインとして質がよい。評価項目をしっかりひとつづつ見ていけば当然シルバーになる。まさに沼田さんのいうところの議論なんじゃない?。

 

宮地:安くて、普段ワインに親しんでいる方向けということになっちゃうのかな。

 

沼田:樽が効いているという点はどうなのかな。

 

田中:僕もそう思います。この路線なら樽のニュアンスはいらない。

 

宮地:これ、残糖どのくらいありますかね?50gくらいかな。

 

田中:このいい意味での馬鹿っぽさが素晴らしい。この価格帯のモスカートはこのくらいなんにも考えてない感じがいいんだよ。

 

宮地:皆さんに聞きたいのは、このワインはこれまでの文脈で言えば辛口でないワインになるわけですが、その辺どう思われますか?僕はアルトアディジェのワインの扱いがあるんですが、試飲販売をすると、普段ワインに接してない方にはドライ・モスカート・ジャッロが一番受けがいいんですよ。甘やかで爽やかさがあって。

 

田中:そう。ドイツワインだってそう。素直に美味しいですよ。

 

宮地:けれどワイン業界の人はマスカット品種評価しないですよね?

 

田中:まったくその通りで、その話をしたら僕は話が長くなってしまうのだけれど。マスカットはこのワインのようなスタイルでいいと思っています。マスカットらしいし、これが千円ちょっとで流通してるわけでしょ。多くの人にこういうワインもあるのだと伝えたい。炭酸で割っても美味しいだろうし、細かいこと言わずになんだっていいから普通に飲めばいいのですよ。僕のテーブルだったら金賞にしたかもしれない。マスカット推したいから。

 

宮地:一度会期中田中さんに振ったじゃないですか。僕がアンソニー・ローズさんのテーブルで、彼は岡山のラブルスカ系品種の甘口を評価し、僕はオーストラリアのマスカット系品種を推しました。その時田中さん、そのマスカットは却下してました。

 

田中:覚えてますよ。あれはこのワインに比べたら単調だった。これは下半身の安定感もあるし、フィニッシュも心地よい。キメも細かい。ゴールドの気がしてきた。

 

沼田:いや、ゴールドかはさておき、ゴールドではないと思うんだけれど。それよりもなんでこれが日本の消費者に受けないのかということでしょ?個別に伝えれば受けがいいのに、何故業界で、専門誌とかでこのワインを推さないのかという話でしょう。さっき田中さんが言った、皆が辛口だって言ってるシャルドネが果たして辛口なのかっていう話に似ていて、カリフォルニアのケンドール・ジャクソンが辛口表記で残糖7g、それがアメリカ人が一番おいしいと思うから。そして大ヒットして、躍進した歴史があります。

 

田中 ええ、私がミシガン州のステーキ店で働いていた頃、あのワインはよく売れました。当時のシャルドネの基本でしたね。

 

沼田 辛口が現代的、格好いいとか、カロリーを気にしているとか、フードフレンドリーだとか、地中海的だとかいろいろ辛口志向の理由はあると思うんですよ。けれど実際は大多数はちょっと残糖があるほうが好きだというのがさっきのシャルドネの話。マスカットに関しては甘口=初心者向けという図式があり、加えて日本はリーフプラウミルヒが入ってきた事情もあって、甘口アレルギーがある。けれどマドンナと比べたらこちらの方がはるかにモダンだし、ファッショナブル。その辺のところを分けて、甘口だからとか、辛口だけれどということが第一義的な選択の理由にのぼらないようにしないと。

 

川口:思い込んでいるところはありますよね、ワイン業界のプロフェッショナルの方も。

 

宮地:その延長線上に偉大さはないですからね、田中さんの言葉で言う馬鹿っぽさの先に。シャルドネやその他のワインにはそれがありますからね(笑)まぁマスカットもすごい甘口あるか。

 

田中:偉大さとは違うカテゴリーのワインも必要です。馬鹿っぽさも突き詰めれば崇高になります。

 

川口:消費者の支持するワインと、ワイン業界の方々の考える良いワインにはちょっと乖離しているのかもしれませんね。

 

田中:業界の人は偏狭になってはいけない。消費者の潜在的な嗜好に対してはオープンなスタンスでいないと。多元的な価値観を持たないと閉塞状況になる。

 

宮地:田中さんが言うか(笑)というのは置いておいて、その辺がJWCの最初のどういうワインを薦めていきたいかという話で、薦めていった先は想像力の世界だったりするわけで。

 

田中:この産地のこのワインだったらこの方向だと、飲んだ瞬間にいろいろと見えなければいけないと思う。先ほどのマウレのシャルドネも、マウレの陰気さが最低価格帯のシャルドネにとってプラスなのかどうかといった突っ込んだ議論が必要です。このオーストラリアのモスカートはこの方向で正解だと思う。

 

沼田:流行ってるからね。オーストラリアはモスカート。

 

川口:こういう甘口のスタイルですか?

 

宮地:そういう気楽さって、ワイン文化、文化なんていうと仰々しいけど、成熟してるなと思うんですよ。日本より。

 

田中:モスカートは韓国料理屋で飲むと美味い。もちろんボトル一本飲むかどうかは別にして、キムチ食べながら冷えたモスカート。相性抜群ですよ。

 

沼田:宮地さんがモスカート持ってくるって言っていたから、今日の昼食はカレーのテイクアウトです。ジェイコブスクリークのモスカートをビールと同じ温度にして、やっぱりスイスイ飲めちゃうよね。モスカートってのはさ、香りがこれだけあるから良く冷やしたとしても香るじゃない。カレー食べたらワインの味はわかんなくなるわけだけど、ジャスミン茶だってそうだよ、香りがあるから。わざわざワイン合わせる必要ないんじゃない?って言われたりするんだけど、そんなややこしいことではなく自然にそういった世界は作れるわけ。ライフスタイルマーケティングの世界です。そういうのを浸透させようと思うと、ビジネスとしては規模が大きすぎて、ワイン業界がやり切れないところ。

 

田中:まったく同感ですね。今の話はなにも難しいことではない。こういうワインが日の目を見ないのはもったいない。「ビールみたいに冷やして飲む」。それでいいんですよ、ちょっとでもタンニンあったらひっかかっちゃうけど、そうじゃない、飲めばおいしさがわかるんだから。私は西オーストラリアのジオグラフのモスカートが最高に好きですよ、もっとトロピカルです。

 

沼田:そうね、トロピカルはわかる。マーガレットリバーまで行かないから、全体に締まりがないのよ。ゆるいの。本当エビとか獲って食べていける人がいるような土地で、雰囲気もゆるい。夕焼けがきれいでさ。

 

宮地:それでいくと、プロセッコやロゼなどもそうで、先ほどのライフスタイルマーケティングの話でワインそのものが前面に出ないワイン消費っていうのを考えさせられるワインだと思うんですよ。

 

田中:昔アルザスの生産者が来日した際、ミュスカが出て来た時に参加者が「ミュスカは料理とは合わない」と言っていた。皆プロですよ。プロが皆集まってミュスカなんて料理に合わないって批判するわけ。おかしいじゃない。だってアルザスといえばミュスカで白アスパラガスでしょう。どちらも細身ですうっと伸びる印象で香りがいい。

 

宮地:合う、合わない、マリアージュって本当に難しいですけど、確かにそれは定番の組み合わせですね。

 

田中:JWCみたいな機会に、こうしたワインはあらためて引き上げないといけないと思う。ミュスカ、モスカートに対しては世の中偏見の塊なんだから、自分ならあえてゴールドにして、コメントをしっかり書くかな。

 

沼田:いや、ゴールドではないけれど、モスカートだって価値があるよと、こうした場で議論できるのはいいことですよ。実際にこのワインは世界的には売れています。

その4番外ボルドーに続く

 

本日お集まりいただいた皆様のご紹介
numata

沼田実さん
ワイン輸入会社での勤務経験、醸造家としての海外実習およびソムリエ経験を活かした多彩な講義内容が特長。特にコンテストの審査員として培われた論理的テイスティングには定評がある。
テイストアンドファン株式会社代表取締役
WSET®認定Level4Diploma
公式プロフィールはこちら

田中克幸
田中克幸さん
某大手外食企業の取締役として渡米、帰国後数々のワイン雑誌の主筆を務め
独自のワイン観で、生産者にも舌鋒鋭く切り込む。ジャパン・ワイン・チャレンジ副審査委員長。

kawagutiazusa
川口梓さん
「もっと!ワイン」代表
WSET認定Level4 Diploma
ジャパンワインチャレンジ審査員
大学在学中に留学先のリヨンでワインに目覚める。
都内の大手酒販店、ワインのインポーターで約17年間勤務後、2017年に独立。ファインワインの消費者の裾野を広げるべく、個人販売「もっと!ワイン」の開業準備中。

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