コラム 2017.10.26

ジャパン・ワイン・チャレンジを振り返って~その2シャルドネ~

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その1はコチラ

Regional Trophy for Best White Wine for MexicoGold

Casa Madero Chardonnay 2016(メキシコ)

Bronze

Reserve Collection Chardonnay 2015/Hugo Casanova(チリ)

 

田中 当然これはゴールドでしょう!

 

沼田 価格帯千円台、カテゴリーAだよね。千円台と考えたら素晴らしいじゃない。

 

宮地 これ、メキシコですか?何でこんなに完熟感あるんですか?糖度そんなに上がる産地なんですか?

 

沼田 なんでこんなにフレッシュさがあるかだよね、ヴァレ・デ・パラスって知ってる?バハ・カリフォルニアの方なのかな。

 

宮地 国中でワイン造ってるわけではないですよね?

 

田中 メキシコは基本高地で造られている。

 

宮地 なんでこんなにリーズナブルでリッチになるんですか。

 

沼田 人件費が安い。そりゃトランプ大統領も怒るよね。

 

宮地 グラン・レゼルヴァってありますけど長く樽熟成してるかっていうと疑問ですね。

 

沼田 恐らく、リオハの様な厳密なレギュレーションとは違うかも。ラインナップの上のクラスだけ樽をある程度使うとかね。生産者の判断なんじゃない。

 

川口 これは文句なくゴールドに決まったワインですね。アンソニー・ローズさんがリーダーだったテーブルです。

 

沼田 ローズさんね、あの人はオープン・マインドで良い人。日本のワインにもゴールドをつけるよね。

 

宮地 あの人、日本ワイン贔屓なんですか?それは僕も一緒に審査してて思うんですけど、本当かなって思っちゃう。

 

沼田 昨年もその話になったけど、JWCでは高い評価をしても、本国に戻ってマスカットベリーAを本当に評価するのかはわからないよね。まぁ根は良い人、目線を合わせられる人だと思う。

 

田中 このワインの良いポイントは?

 

宮地 アピールはありますよね。外交的だと思います。樽を使ってますけど明るいキャラクターですね。

 

田中 樽を使っていながらそれが前面に出るのではなく、果実の凝縮度がいきてるじゃない。いやらしさがない、バランスが自然体で、こういうワインにありがちな「狙ってます、頑張っちゃいました」ってのがない。素晴らしい。

 

宮地 真ん中はつまってないですよね。唯一欠点を挙げるとすると緻密さに欠ける。

 

沼田 しかしワインに緻密さが必要だとは必ずしも言えない。

 

田中 そりゃあ宮地君はブルゴーニュばかり飲んでるから(笑)、それが基本になっているのは分かるが、こうしたクラスのシャルドネには多くの人は緻密ではなく、むしろ果実味のリッチさや質感のクリーミーさや酸のビビッドさを求めているのではないのか。たとえばカーネロスのシャルドネに人がまず求めたいものは緻密さなのか。ロレンツォ・ヴィンヤードともなれば緻密さがあるにせよ。まぁ議論にキリがなくなっちゃうね。

 

沼田 「良いシャルドネ」論になってしまうと際限なく話が続いて、コンクールの審査とは違う話になってしまう。JWCの審査ってそこまで限定的な審査ではない。ロス・カーネロスのシャルドネのコンテストなら、いやサンフランシスコのコンテストやブルゴーニュならそこまでの議論が必要かもしれないけど、このワインは充分によい品質と認められる要件を満たしてるよね。

 

田中 このワインは素晴らしいよ、上から下まで味わいが均一に揃っている。

 

宮地 そういう意味では表面全て均一に味わいがありますよね、そしてキャラクターが明るい。優しい。

 

田中 メキシコのワインにこういうポテンシャルがあると知ってもらうには最高のワインだと思う。数年前にもメキシコのピノ・ノワールでゴールド獲ったワインがあった。ネッビオーロも頑張ってた。消費者に新たな選択肢、新たな視点を提案してくれるのは良いことです。

 

沼田 メキシコは、こういう方向で頑張っていくしかないんだろうね。高品質のスーパーマーケットワイン。

 

宮地 主張のないニュートラルなワインですもんね。らしさの主張が少ないというか。

輸出用産地になっていくんでしょうね。ではもうひとつ、ユーゴ・カサノヴァ。ブロンズです。

 

田中 カテゴリーAだから、初めのワインと同価格帯。でも比べると、明らかに劣る。下半身がない。

 

宮地 少し補酸してますね。ライムっぽい苦みがあります。けど飲み続けられる、はじめのワイン明るすぎて疲れるような。

 

田中 何言ってるんですか、最初のワインは全然疲れないですよ。一本目はポジティブだったけど、これはネガティブな方向に引っ張られています。エネルギーを取られてしまうから飲みたいと思わない。

 

宮地 まぁ暗めのワインであるとは思いますが、それはマイナスポイントにはならない。

 

田中 それはそうだけど、インテンシティーのない「陰」は単にメリハリのない陰気なワインなだけだよ。で、上半身しかないでしょう、補酸の味でしょう、余韻も短いでしょう。

 

宮地 補酸の味が残るけどバランスは、、、

 

田中 良いのか?

 

沼田 悪くないとは思うけど、良くはないだろう。ブロンズは妥当だと思う。あきらかな欠点はないからね。

 

田中 シャルドネに求められるのは下半身の支えですよ。

 

沼田 下半身の味というのは?

 

田中 顎で感じられる味ですよ。それがないってことはシャルドネらしくないってことですよ。

 

宮地 逆にいえば、シャルドネに期待している味ってこういうものかもしれませんよ。この暗さはドライさからくるシリアスさでもあります。

 

沼田 マーケット的には、この価格のワインを主に楽しんでいる層がね、ブルゴーニュを飲んでいるとは限らないと思うわけですよ。その時のシャルドネの個性は、ブルゴーニュ的なものとは違うキーワードになるんじゃないかな。

 

田中 千円台のヴァラエタルワインとしてのシャルドネに求められるのは、シリアスなことではなく、リッチであるとかクリーミーであることでしょうが。

 

宮地 いや、リッチな味、クリーミーな味、可能であるならばビターな酸、微かでもミネラリティ。

 

田中 だから、このワインはリッチでもクリーミーでもない、と言っているんです。

 

沼田 おそらくこのワインはリザーブでしょう。ということは、この生産者のラインナップにはアンオークドのシャルドネがあるんですよね。このワインの生産者の考え方では良いブドウ、いくばくか高値で取引されるブドウに樽をかけて上のラインを造る、というものでしょう。しかしブルゴーニュの考え方って違いますよね。よいワインはよいロケーションの畑から生まれる。まぁ着地としては僕もまったくこのメキシコがトロフィーでこのチリがブロンズって言うのには異論はないですよ。

 

宮地 田中さん、マウレ・ヴァレーとか好きかと思いました。もっと良いこと言ってくれるかと思ってましたよ。チリのなかでは陰のあるワインになりますし。

 

田中 確かにマウレは雨が降るからね。でも砂地なんだろうな、この凝縮感のなさ。マウレが好きか嫌いかというより、シャルドネの産地としてどうなのか、とは思う。

 

沼田 雨が降るからこそ水はけのよい砂地を選んでいるって言うのはあるのかもしれませんね。ロス・カーネロスのシャルドネもこういう芯のないワインありますよね。涼しさは良いけど土が軽すぎてしまって。

 

宮地 表現としては浮足立ってるというところになるんですかね。

 

沼田 アメリカでは意外と評価高かったりする。ブルゴーニュ的な見方と違うんだよ。

 

田中 けどカーネロスの場合はこんなに陰気じゃない。陰気なのは日常用のワインとしてはふさわしくない。それにカリフォルニアだったら残糖数グラム残してでも、この下半身のなさを補うと思う。

 

宮地 なるほどね。押してるわけじゃないけどこのワインはおそらく一般的に口にされる辛口っていうニーズに合致しているのかなと。まぁ残糖の話になったところでモスカートにしましょうか。

その3モスカートに続く

 

本日お集まりいただいた皆様のご紹介
numata

沼田実さん
ワイン輸入会社での勤務経験、醸造家としての海外実習およびソムリエ経験を活かした多彩な講義内容が特長。特にコンテストの審査員として培われた論理的テイスティングには定評がある。
テイストアンドファン株式会社代表取締役
WSET®認定Level4Diploma
公式プロフィールはこちら

田中克幸
田中克幸さん
某大手外食企業の取締役として渡米、帰国後数々のワイン雑誌の主筆を務め
独自のワイン観で、生産者にも舌鋒鋭く切り込む。ジャパン・ワイン・チャレンジ副審査委員長。

kawagutiazusa
川口梓さん
「もっと!ワイン」代表
WSET認定Level4 Diploma
ジャパンワインチャレンジ審査員
大学在学中に留学先のリヨンでワインに目覚める。
都内の大手酒販店、ワインのインポーターで約17年間勤務後、2017年に独立。ファインワインの消費者の裾野を広げるべく、個人販売「もっと!ワイン」の開業準備中。

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